― 34年ぶりの引き下げ
2026(令和8)年度における全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率が、現行の10.0%から9.9%へと引き下げられる方針が示されました。これは協会けんぽの発足後で初めての保険料率の引き下げとなり、厚生労働省が政府予算案を踏まえた収支見込みで公表した内容に基づくものです。
■ 保険料率改定の背景と内容
協会けんぽが令和8年度の収支見込みとして公表した資料によれば、次のとおりです。
- 平均健康保険料率(医療分):9.9%(前年度:10.0% → 令和8年度:9.9%)
- 介護保険料率:1.62%(前年度:1.59% → 令和8年度:1.62%)
- 子ども・子育て支援金率:0.23%(令和8年4月開始)
これらの料率は、令和8年3月分(4月納付分)以降に適用される見込みです。なお、子ども・子育て支援金率は、2026年4月からスタートする新たな制度に基づき徴収されます。
■ なぜ料率が引き下げられるのか
協会けんぽの収支見込みによると、令和8年度の保険料収入は前年度見込みと比較して516億円の増加が見込まれるとされています。これは、平均保険料率の引き下げにもかかわらず、被保険者の標準報酬月額の上昇(賃金上昇)により保険料収入が増加するためです。
一方で、医療給付費などの支出総額は前年から約1,951億円増加する見込みであり、保険者としては医療費の増加傾向を踏まえた財政運営が求められています。
■ 子ども・子育て支援金制度の導入
2026年度から新たに導入される「子ども・子育て支援金制度」は、子育て世代への支援を目的として、健康保険料率とは別枠で徴収される新たな仕組みです。協会けんぽではこの支援金率を0.23%と設定しました。
この支援金は社会保障制度全体の見直しの一環として位置付けられており、保険者(協会けんぽ)を通じて徴収されます。制度の詳細については厚生労働省やこども家庭庁の公表資料等で今後さらに明らかになる見込みです。
■ 企業実務への影響
令和8年度の協会けんぽ保険料率引き下げは、給与計算や労働保険料・社会保険料の控除額に直接影響します。特に次の点は企業の総務・人事担当者が注意すべき事項です。
- 給与明細の控除計算:4月支払い分(3月計算)から料率が変更となるため、給与システムの料率更新が必要です。
- 介護保険料と支援金率の併用:介護保険料は増加し、子ども・子育て支援金は新設されるため、社会保険料の総額計算が変わります。
- 手取り変動の把握:料率引き下げによって手取りが増える可能性がありますが、支出全体での影響は健康保険だけでなく介護分・支援金分を併せて確認する必要があります。
■まとめ
協会けんぽが令和8年度の平均保険料率を引き下げるのは、約34年ぶりの措置であり、財政状況や賃金水準の動向を反映した結果です。
一方で、介護保険料の上昇や子ども・子育て支援金の導入は新たな負担要素として併存するため、労務管理上の対応が求められます。
保険料改定は毎年3月頃に都道府県単位で決定・公表されます。企業におかれましては、最新の料率情報を確実に取り込み、給与計算や総務実務のミスを防ぐことが重要です。
