― 宿泊・飲食業で顕在化する課題と企業が取るべき対応 ―
東京商工会議所が令和7年12月10日に公表した「働き方改革に関する緊急アンケート調査」によると、時間外労働の上限規制により「事業運営に支障が生じている」と回答した企業は20.5%にとどまりました。
一方で、宿泊・飲食業では55.6%、運輸業では54.7%と、半数以上の企業が支障を感じているという結果となっており、業種間で大きな差があることが明らかになっています。
1.時間外労働の上限規制の法的根拠
時間外労働の上限規制は、労働基準法第36条および同条に基づく告示(「時間外労働の限度に関する基準」)により定められています。
原則として、
- 時間外労働は 月45時間・年360時間以内
- 臨時的な特別の事情がある場合でも
- 年720時間以内
- 月45時間超は 年6か月まで
- 単月100時間未満(休日労働含む)
- 複数月平均80時間以内
とされています。
今回の調査で、支障が生じている企業の約6割が「月45時間超は年6か月まで」という点を対応困難と回答しているのは、まさにこの法定上限が現場の実態と合致していないことを示しています。
2.宿泊・飲食業で影響が大きい理由
宿泊・飲食業は、
- 繁閑差が大きい
- 突発的な欠員が生じやすい
- 顧客対応時間が需要に左右される
といった特性があります。
これに加え、調査では対応困難な理由として「全社的な人手不足」を挙げた企業が60.6%に上っており、上限規制そのものよりも、人員体制・シフト設計の限界が問題となっていることが読み取れます。
厚生労働省も、時間外労働の削減は単なる残業抑制ではなく、業務の見直しや人員配置の適正化と一体で進める必要があるとしています
3.「守っているつもり」が最も危険
現場では、
- 36協定は締結しているが内容を正確に把握していない
- 月単位では問題がなく、年単位で違反している
- 管理職が実労働時間を把握できていない
といったケースが少なくありません。
上限規制違反は、是正勧告・企業名公表・書類送検につながる可能性もあり、特に人手不足業種ほどリスク管理が重要となります。
「人手不足だから仕方ない」では済まされないのが、時間外労働規制です。
自社の状況を客観的に把握し、法令を守りながら持続可能な働き方を構築することが、これからの企業経営には欠かせません。
時間外労働対策や働き方改革対応でお悩みの際は、ぜひやまぐちFP社会保険労務士事務所にご相談ください。
