―「自爆営業」や性的指向・性自認への対応を明確化―
厚生労働省は、パワーハラスメント防止指針の改正案を示しました。
今回の見直しでは、これまで明文化されていなかった行為が、パワハラに該当し得ることを明確にした点が大きなポイントです。
①「自爆営業」をパワハラになり得る行為として明記
上司や会社が、部下に対して
- 商品やサービスの自己購入を強要する
- ノルマ達成のために買い取りを迫る
といった、いわゆる「自爆営業」について、パワハラに該当する可能性がある行為として指針に明記されます。
ただし、すべてが直ちにパワハラとなるわけではなく、
- 優越的な関係を背景としていること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
- 労働者の就業環境を害していること
という、パワハラの3要件をすべて満たす場合に該当するとされています。
② 性的指向・性自認に関する行為も新たに明確化
これまで、本人の了承なく性的指向や性自認を他人に伝える行為(アウティング)はパワハラの例として示されていましたが、今回の改正ではさらに、
- 本人によるカミングアウトを禁止する行為
- カミングアウトを強要・強制する行為
も、パワハラに該当し得る行為として明記されます。
本人の意思を尊重せず、開示を「させる」「させない」といった対応はいずれも問題になり得ることが、より明確になります。
③ 企業に求められる対応
今回の見直しにより、企業には以下の点が一層求められます。
- 営業ノルマや販売方法の運用がハラスメントにつながっていないかの点検
- 性的指向・性自認に関する取り扱いについての社内ルールの明確化
- 管理職・現場向けのハラスメント教育の強化
「昔からの慣行」「業界では当たり前」とされてきた対応が、明確にリスクとなる時代に入っています。
✔ 以下のご相談はやまぐちFP社会保険労務士事務所まで
- 自爆営業に関する社内ルール・ガイドライン作成
- パワハラ防止規程の改定
- 管理職研修用の具体事例整理
- 問題発生時の初動対応アドバイス
●自爆営業が問題となりやすいケース整理(パワハラ該当リスクの高い場面)
① 上司・会社が「購入を事実上強制」しているケース
リスク:極めて高い
次のような言動がある場合、パワハラ該当の可能性が高くなります。
- 「達成できなければ自分で買え」
- 「みんなやっている」
- 「買わないと評価に響く」
- 「今回だけだから協力してほしい」と繰り返し要請
➡ 形式上は“任意”でも、上下関係を背景に断れない状況があれば「強要」と判断されやすい。
② 人事評価・処遇と結び付けているケース
リスク:非常に高い
- 自己購入をしない社員だけが低評価
- 昇進・昇格・賞与に明確な不利益が生じる
- 面談で「買わなかったこと」を指摘される
➡ 優越的地位を利用した不利益取扱いとなり、
パワハラ+人事権濫用のリスクが重なります。
③ チーム目標・連帯責任を理由に圧力をかけるケース
リスク:高い
- 「チーム目標だから誰かが補填しろ」
- 「足りない分は若手が買うのが当然」
- 会議や朝礼で購入を促す発言
➡ 個人の自由意思が否定され、集団圧力による強制と評価されやすい。
④ 断った社員を叱責・晒すケース
リスク:非常に高い
- 断った社員を名指しで注意
- 「やる気がない」「協調性がない」と発言
- 職場での居場所を悪化させる対応
➡ 精神的苦痛を与える言動として、
パワハラ3要件をすべて満たす可能性が高い。
⑤ 長時間労働・休日対応と組み合わさるケース
リスク:高い
- 休日や深夜に自己購入を求められる
- 残業・休日出勤と自爆営業が常態化
➡ 労災・メンタル不調・過労死等リスクと直結しやすく、
企業責任が重く問われやすい。
⑥ 「慣習」「業界の常識」で正当化しているケース
リスク:中~高
- 「昔からこうしている」
- 「営業職なら当たり前」
- 就業規則・方針に明確な記載がない
➡ 慣行は免責理由にならないため、
指針改正後は特にリスクが顕在化。
企業が取るべき実務対応
✔ 明確にNGとすべきこと
- 商品・サービスの自己購入の指示・示唆
- 購入の有無を評価や処遇に反映
- 断った社員への不利益・叱責
✔ 望ましい対応
- ノルマ未達時の対応ルールを明確化
- 営業目標は業務プロセス評価と併用
- ハラスメント防止規程・研修で明示
- 管理職向けに「自爆営業=パワハラリスク」を周知
以下のご相談はやまぐちFP社会保険労務士事務所まで
- 自爆営業に関する社内ルール・ガイドライン作成
- パワハラ防止規程の改定
- 管理職研修用の具体事例整理
- 問題発生時の初動対応アドバイス
