労災保険制度の見直しへ

2026年1月14日、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会は、労災保険制度の見直しに関する建議(報告)を厚生労働大臣に提出しました。これを受けて厚労省は、労災保険法の一部を改正する法律案要綱の作成準備を進める方針を示しています。

以下、建議の主要な内容について整理します。


暫定任意適用事業の廃止

現在、小規模な個人経営の農林水産業など一部の業種は、労災保険の強制適用対象ではなく「暫定任意適用」とされています。その適用区分を廃止し、労災保険法を順次全面的に適用する方向が示されました。

これは、制度のカバー範囲を広げて、労働災害に対するセーフティネットを強化する趣旨とされています。


遺族(補償)等年金の男女差を解消

現行制度では、一定条件で夫と妻の支給要件に差異がありましたが、これを解消する方向での見直しが建議されました。具体的には、夫のみに課されていた年齢条件等を撤廃する案が示されています。


消滅時効期間の延長

労災保険給付請求権の「消滅時効期間(現行2年)」について、

  • 脳・心臓疾患
  • 精神障害
  • 石綿関連疾病

など、発症から迅速な請求が困難な疾病については、時効期間を5年に延長する方向が示されています。


特別加入制度の明確化

建議では、フリーランス等の加入を想定した特別加入制度について、

  • 現在は通知ベースの要件
  • 法令に明確な要件を置くべき

との提言がなされています。


社会復帰促進等事業に不服申し立て対象を拡大

現在は労災保険給付と別扱いとされてきた「社会復帰促進等事業の給付(特別支給金等)」についても、

  • 審査請求・取消訴訟の対象にする
    との提言が含まれています。

メリット制の在り方と情報提供

建議では、労災保険の保険料を増減させるメリット制(保険料収支率制度)を存続させつつ継続的に検証する方向が示されました。また、特定の条件下での事業主への給付決定情報の提供についても盛り込まれています。


法改正への次のステップ

建議内容は現在のところ法律案要綱作成のためのものであり、今後厚生労働省から、

  • 労災保険法の改正案として通常国会に提出
    というプロセスに進む見込みです。

実際に法改正となれば、対象事業・適用要件・給付水準・請求権の時効などが法令上に明記され、制度運用が変わります。確定情報は、厚生労働省の報道発表資料や省令告示等で逐次確認する必要があります。


労災保険制度は、労働者の安心につながる重要な社会保険制度であるとともに、企業にとっても

  • 保険料負担の構造
  • 給付対象・時効期間
  • 特別加入の対応
  • 事業主への情報提供

など、多岐にわたる影響を持つ制度です。

今回の労政審建議のような法改正動向は、企業のリスク管理・労災防止施策・加入手続き体制の見直し機会になります。

当事務所では、労働災害防止計画・安全衛生管理体制の構築支援などのサポートを通じて、企業の安心安全な労働環境づくりと制度対応を支援しています。

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