― 令和8年度介護報酬改定と処遇改善加算の拡充 ―
厚生労働省の社会保障審議会 介護給付費分科会は、令和7年12月23日、
令和8年度介護報酬改定に向けた審議報告を取りまとめました。
介護報酬は介護保険法に基づき3年に1度改定されるのが原則であり、次回の本格改定は令和9年度が予定されていました。
しかし、介護分野では深刻な人手不足が続いていることから、職員の処遇改善を目的とした緊急的な報酬改定が実施されることとなりました。
1.介護職員の処遇改善と法的背景
介護分野の人材確保は、介護保険制度創設当初からの重要課題です。
近年は特に、他産業との賃金格差や離職率の高さが問題視されてきました。
これを受け、介護保険法第41条・第42条等に基づく介護報酬の中で、「介護職員等処遇改善加算」が創設・拡充されてきました。
今回の審議報告では、「介護職員等の賃上げを確実に実現するための緊急的対応」として、当該加算をさらに拡充する方針が示されています。
2.処遇改善加算の拡充内容
今回の改定の大きなポイントは、加算の対象範囲を大幅に広げることです。
(1)対象職種の拡大
従来、処遇改善加算は主として介護職員が対象でしたが、
今回の見直しでは、
- 介護職員以外の介護従事者
(事務職、生活相談員、リハビリ職等を含む想定)
も加算による賃上げの対象とされます。
これは、厚労省が示す「介護現場を支える幅広い職種全体の処遇改善が必要」という考え方を反映したものです。
(2)対象サービス類型の拡大
さらに、これまで対象外または限定的だった、
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅介護支援
といったサービス類型も、加算対象に追加されます。
在宅系サービスを含めた一体的な処遇改善を図る点が、今回の特徴です。
3.施行時期は令和8年6月から
今回の介護報酬改定は「緊急的対応」として行われるため、施行時期は令和8年6月とされています。
これは、令和7年度補正予算により、令和8年5月分までの賃上げ支援措置がすでに講じられていることを踏まえ、制度の切れ目が生じないよう配慮されたものです。
4.介護事業者の実務への影響
この改定により、介護事業者には次のような実務対応が求められます。
- 処遇改善加算の算定要件の再確認
- 対象職種拡大に伴う賃金配分ルールの見直し
- 賃金改善計画書・実績報告書の作成対応
- 就業規則・賃金規程の改定
- 職員への説明・合意形成
特に、処遇改善加算は「全額を賃金改善に充てること」「合理的な配分ルールを設けること」が求められており、対応を誤ると返還リスクもあります。
5.まとめ
介護報酬改定と処遇改善加算は、制度理解だけでなく、人事・労務管理の実務対応が不可欠です。
今回の緊急的な改定は、単なる一時的賃上げではなく、持続可能な人材確保の仕組みづくりが重要となります。
