職場の熱中症対策は「重篤化防止」から「予防」へ

― 改正安衛則の実効性と今後の指針策定の動き ―

厚生労働省は令和7年12月23日、「職場における熱中症防止対策に係る検討会」の初会合を開催しました。
これは、令和7年6月に施行された改正労働安全衛生規則による熱中症対策の効果を検証し、今後の在り方を検討するためのものです。

改正労働安全衛生規則による事業主の義務

今回の検討の前提となっているのが、改正労働安全衛生規則です。
同規則では、熱中症による重篤化防止を目的として、事業者に次の措置を義務づけました。

  • 熱中症発生時の体制整備
  • 症状悪化を防ぐための措置および実施手順の作成
  • これらの内容を関係作業者へ周知すること

これらは、単なる努力義務ではなく、労働安全衛生法第22条(事業者の危険防止義務)を具体化する規定として位置づけられています。

改正の効果と残された課題

厚生労働省が示したデータによると、改正安衛則施行後、

  • 令和7年10月末までの職場における熱中症死亡者数
    12人(前年同時期29人)

と、死亡者数は大きく減少しました。

一方で、

  • 休業4日以上の死傷者数
    1,537人(前年同時期1,112人)

と、中等度以上の熱中症はむしろ増加している状況です。

この結果から、検討会では

「重篤化防止対策だけでは不十分であり、発症そのものを防ぐ予防策の重要性が高い」
という認識が共有されました。

予防策重視のガイドライン策定へ

これを受け、厚生労働省は今後、
「熱中症の予防」に重点を置いたガイドライン(指針)を策定する方針を明らかにしています。

現時点でも、厚生労働省は以下のような資料を公表しています。

  • 職場における熱中症予防対策マニュアル
  • STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」リーフレット

これらでは、

  • WBGT値(暑さ指数)の活用
  • 作業時間・休憩時間の管理
  • 水分・塩分摂取の徹底
  • 服装や作業環境の改善
  • 健康状態の把握と声かけ

など、発症予防を前提とした具体策が示されています。

今後策定されるガイドラインは、これらを踏まえつつ、
改正安衛則と一体で運用すべき実務指針になると考えられます。

事業者が今から取り組むべき実務対応

ガイドライン策定を待つだけでなく、事業者には今から次の対応が求められます。

  • 改正安衛則に基づく
    体制整備・手順書・周知が確実に実施されているかの点検
  • 熱中症を「起きてから対応するもの」ではなく、
    「起こさないための安全配慮」へ発想を転換
  • 厚労省マニュアル等を踏まえた
    自社の作業実態に合った予防ルールの明文化

熱中症対策は、安全配慮義務違反が問われやすい分野でもあります。
今後の指針策定を見据え、先行して予防体制を整えることが、リスク管理上も重要と言えるでしょう。