― 改正労働施策総合推進法と指針案のポイント ―
1.法改正の概要
厚生労働省は、令和7年12月10日、「治療と就業の両立支援に関する指針(案)」について意見募集を開始しました。
これは、改正労働施策総合推進法の施行により、令和8年4月から、治療を受けながら働く労働者を支援するための措置が事業主の努力義務となることを受けたものです。
本改正は、これまでガイドラインや行政施策として進められてきた「治療と仕事の両立支援」を、法律上の枠組みとして位置付けた点に大きな意義があります。
2.「治療と就業の両立支援」とは
厚生労働省では従来から、がん、脳血管疾患、糖尿病、精神疾患、難病など、継続的な治療を受けながら働く労働者について、就業継続を支援する取組を推進してきました。
【参考資料】
- 厚生労働省「治療と仕事の両立支援ガイドライン」
- 厚生労働省リーフレット
「治療と仕事の両立支援のために事業主・人事労務担当者が取り組むこと」
今回の指針案は、これら既存の考え方を踏まえつつ、企業として整備すべき体制や運用ルールをより明確化するものといえます。
3.指針案で示されている主な内容
指針案では、事業主に対し、次のような事項を労使の理解のもとで整備することが求められています。
(1)両立支援の対象者・対応方法の明確化
- どのような治療・状況の労働者を対象とするのか
- 勤務時間の配慮、業務内容の調整、休暇制度の活用などの対応方針
これらについて、社内ルールとして明文化することが重要とされています。
(2)相談窓口の明確化
- 治療と就業の両立について相談できる窓口を明確にすること
- 人事部門、上司、産業保健スタッフ等の役割分担を整理すること
(3)個人情報の適切な管理
治療内容や病状に関する情報は、要配慮個人情報に該当します。
指針案では、
- 本人の同意の取得
- 取扱う情報の範囲の限定
- 情報管理体制の整備
といった点に特に留意することが示されています。
(4)産業医・主治医等との連携
- 産業医や保健師との連携
- 主治医の意見書等を踏まえた就業上の配慮
について、医学的見地と職場の実情を踏まえた調整を行うことが求められています。
4.「努力義務」であっても実務対応は不可欠
今回の改正は「努力義務」とされていますが、
- 両立支援を行わないことによる離職
- 不十分な配慮による安全配慮義務違反の問題
- ハラスメントや不利益取扱いと評価されるリスク
などを考えると、実務上は制度整備が強く求められる内容です。
特に、就業規則や社内規程への反映、相談対応フローの整備は、今後の人事労務管理において重要なポイントとなります。
5.社労士としての実務的視点
治療と就業の両立支援は、「特別な社員への配慮」ではなく、
誰もが将来当事者になり得る前提での職場環境整備です。
- 社内ルールの整備
- 管理職への周知・教育
- 産業医等との連携体制構築
を段階的に進めることで、法改正対応と同時に、人材の定着や職場の信頼性向上にもつながります。
令和8年4月の施行を見据え、早めの準備が望まれます。
