同一労働同一賃金ガイドライン見直し案の概要

1.見直しの背景

 厚生労働省は、令和7年11月21日に労働政策審議会・同一労働同一賃金部会を開催し、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し案を示しました。
パート・有期雇用労働法施行後に積み重ねられた最高裁判決の判断枠組みをガイドラインに反映することが目的です。

2.見直しの全体像

 同一労働同一賃金ガイドラインは、正規雇用労働者と短時間・有期雇用労働者との間に待遇差がある場合に、不合理とされるか否かの考え方と具体例を示すものです。
今回の見直し案では、次の点が大きな特徴となっています。

  • これまで記載がなかった「退職手当」等の待遇項目を新たに追加
  • すでに記載のある「賞与」等についても記載内容を具体化
  • 待遇差の理由として用いられてきた「正社員人材確保論」への考え方を明確化

3.「正社員人材確保論」への整理

 一部の裁判で根拠とされてきた、「通常の労働者としての職務を遂行できる人材の確保・定着」を目的とする考え方について、

  • その目的があることのみをもって、待遇差が当然に不合理でないと認められるものではない

と明確に整理されました。

4.賞与の考え方(長澤運輸事件最高裁判決)

 賞与については、次のように整理されています。

  • 性質・目的
    労務の対価の後払い、功労報償、生活費補助、労働意欲の向上など、多様な性質・目的を持つもの
  • 不合理とされうる場合
    短時間・有期雇用労働者にも賞与の性質・目的が妥当するにもかかわらず、
    • 職務内容や配置変更範囲等の違いに応じた均衡のとれた賞与を支給しない
    • その見合いとして基本給を高く支給している等の事情もない場合には、賞与の相違は不合理と判断される可能性がある

5.退職手当の考え方(メトロコマース事件最高裁判決)

 退職手当についても、賞与と同様の枠組みで整理されています。

  • 性質・目的
    労務の対価の後払い、功労報償など
  • 不合理とされうる場合
    短時間・有期雇用労働者にも性質・目的が妥当するにもかかわらず、職務内容や配置変更範囲等の違いに応じた均衡ある退職手当を支給せず、その代替として基本給を高くしている等の事情もない場合には、退職手当の相違が不合理と認められうる

6.その他の待遇項目の整理(最高裁判決の反映)

 見直し案では、以下の待遇についても、最高裁判決を踏まえた考え方が示されています。

  • 住宅手当・無事故手当
    → ハマキョウレックス事件
  • 家族手当
    → 日本郵便(大阪)事件
  • 病気休職
    → 日本郵便(東京)事件
  • 夏季・冬季休暇
    → 日本郵便(佐賀)事件

7.実務上のポイント

  • 賞与・退職手当を「正社員のみ」としている場合は、制度の目的・性質と職務内容との関係を再点検する必要があります。
  • 「正社員だから」「人材確保のため」という説明だけでは、不合理性を否定できない可能性が明確になりました。
  • 就業規則・賃金規程の見直しや、待遇差の合理的説明が、今後ますます重要となります。

8.まとめ

 今回の見直し案は、裁判実務で確立されつつある考え方をガイドラインに明確に反映し、企業に求められる説明責任を一段と具体化する内容となっています。
今後は、各待遇の「目的」「性質」「職務内容との関係」を整理したうえで、合理的な待遇設計と文書化を進めることが重要です。