1.制度改正の背景
厚生労働省は、令和7年11月20日、「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル(案)」を公表しました。
現行マニュアルは、労働者数50人以上の事業場を前提とした内容ですが、労働安全衛生法の改正により、公布日から3年以内に、事業場規模にかかわらずストレスチェックが義務化されることとなっています。
これを受け、50人未満の小規模事業場を念頭に置いた実務上の留意点を整理したマニュアル案が示され、令和8年度中の正式公開が予定されています。
2.小規模事業場における実施体制の考え方
小規模事業場では、人員や体制の制約が大きいことから、労働者のプライバシー保護の観点を特に重視した運用が求められています。
- ストレスチェックの実施については、外部機関への委託が推奨されています。
- ただし、外部委託を行う場合であっても、
- 実務担当者の選任
- 実施体制の整備
などについては、事業者自身に責務があることが明確に示されています。
3.集団分析(職場環境改善)に関する留意点
職場環境改善に向けた集団分析については、個人が特定されない方法で行うことが必須とされています。
- 集団の人数が10人未満の場合
→ 個人が特定されるおそれがあるため、原則として集団分析は実施しない - 小規模事業場では、部署単位ではなく、
- 事業場全体
- 複数部署をまとめた単位
など、工夫した集計が求められます。
4.高ストレス者への医師面接指導の対応
50人未満の事業場には、産業医の選任義務がありません。
そのため、高ストレス者から面接指導の申出があった場合の対応として、以下の仕組みが示されています。
- 『地域産業保健センター(通称:地さんぽ)』を活用
- 登録産業医による面接指導を無料で利用可能
小規模事業場にとっては、実務上、非常に重要な支援策といえます。
5.労働基準監督署への報告義務の取扱い
- 労働者数50人以上の事業場
→ ストレスチェック実施結果の労働基準監督署への報告義務あり - 労働者数50人未満の事業場
→ 報告義務なし
ただし、ここで注意すべき点として、
- ストレスチェックの対象者の基準
(例:契約期間1年以上など) - 報告義務の要否を判断する「常時使用している労働者」の定義
これらが一致していないため、50人のカウント方法を誤らないよう注意が必要とされています。
6.実務上のポイント
小規模事業場においては、今後の義務化を見据え、以下の準備が重要です。
- 外部委託を前提とした実施方法の検討
- 社内の実務担当者・窓口の明確化
- プライバシー保護を最優先とした運用設計
- 地域産業保健センターの活用体制整備
- 労働者数の正確な把握と区分整理
7.まとめ
ストレスチェック制度は、大規模事業場向けの制度から、すべての事業場に求められる制度へと転換期を迎えています。
小規模事業場においては、形式的な実施ではなく、無理のない体制づくりとプライバシー保護を両立した運用が、今後の実務上の鍵となります。
