職場における治療と就業の両立のため必要な措置(改正労働施策総合推進法)と、高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置(改正労働安全衛生法)が令和8年4月から事業主(事業者)の努力義務とされます。
令和8年4月施行の2つの改正(①労働施策総合推進法、②労働安全衛生法)では、「努力義務」とはいえ、今後の安全衛生管理・人事労務体制に直結する重要ポイントが多くあります。以下にそれぞれの要点と、事業主が注意すべき点をまとめます。
① 治療と就業の両立支援(改正労働施策総合推進法)
🔹法改正の概要
- 病気の治療をしながら働く労働者が安心して就業を継続できるよう、必要な措置を講ずることが事業主の努力義務となる。
- 対象疾患は「がん」「脳卒中」「心疾患」「糖尿病」など、長期療養を要する疾患を想定。
🔹事業主が注意すべきポイント
- 相談体制の整備
- 両立支援に関する相談窓口を明確化(人事・総務・産業保健スタッフ等)
- 本人の申出に応じて柔軟に対応できる体制づくりが必要。
- 情報共有とプライバシー配慮
- 本人の同意を得たうえで、産業医・主治医・上司などと情報連携。
- 病名や診断内容など、過剰な情報共有を避ける。
- 就業上の配慮措置の検討
- 時間短縮勤務、在宅勤務、通院日の考慮など柔軟な働き方の導入。
- 業務軽減や配置転換など、治療と両立できる勤務体制を検討。
- 制度化と社内周知
- 「両立支援制度」や「申出手続」を就業規則・社内規程に明記し、従業員に周知する。
② 高年齢労働者の労働災害防止(改正労働安全衛生法)
🔹法改正の概要
- 高年齢労働者の特性(身体機能の低下など)を踏まえた災害防止措置を講ずることが事業者の努力義務となる。
🔹事業主が注意すべきポイント
- 作業内容・環境の見直し
- 高所作業・重量物の取扱い・夜勤など、身体的負担の大きい作業を見直す。
- 足場・床面の滑り防止、段差解消、照度確保などの物理的対策。
- 安全教育・訓練の工夫
- 加齢による注意力低下に配慮し、わかりやすく繰り返し行う教育を実施。
- 転倒防止・熱中症対策など、事例を踏まえた教育内容に。
- 健康管理と体調確認
- 定期健康診断の結果や産業医意見を踏まえ、業務内容の調整を検討。
- 高年齢者の「無理のない作業配置」がポイント。
- 安全文化の醸成
- 年齢に関係なく声を掛け合える職場づくり。
- 管理職や安全衛生委員会での高年齢者対応の議題化。
上記のように実務上の対応は体制整備・制度化・配置配慮等多岐にわたります。
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